新型コロナウィルス感染症の流行に伴い、世界中が今までに直面したことないような出来事に遭遇する日々が続いています。
パンデミックに直面し始まったニューノーマル (New Normal)と呼ばれる新たな日常、そしてその変化への適応が求められる現実は、まるで異文化生活を始めた人が新たな文化に慣れるまでの過程にとても似ていて、人々に大きな戸惑いと精神的ストレスを与えているように思います。
そこで、この記事では、異文化への適応を余儀なくされた移民が辿る精神的ストレス【異文化変容ストレス】を参考に、ニューノーマルへの適応に対するストレスを軽減する方法を提案したいと思います。
人は変化に弱い!?
そもそも人間は、『変化』に弱い生き物だと言われています。というのも、自然界において変化が起きる時というのは、大自然災害や外敵の登場など、生死に直結するような大事態が発生した時。そして、その変化に適応出来ない動物は生き残れなかったのです。そのため、『変化』と『危機』はいつも隣り合わせ、人が変化に危機感を抱くのは本能なのです。
従来とは違う方法で新たな環境に適応していかなければいけない。それには大きな労力が掛かります。同時に、危機感からもたらされる恐怖と、新たな道を模索する不安さは、とてもストレスフルな感情であり、人間が変化に適応することに躊躇いが起こる理由でもあります。
異文化変容ストレスとニューノームへの変化に伴うストレスは同じ?
異文化変容ストレスは、共同体の一員になることが生活の豊かさにつながってきた人間ならではの現象であり、異文化に飛び込んだ移民にとって新たなコミュニティに受け入れられるかそうでないかは生死に隣り合わせに近いような感情を引き起こします。これは個人単位での変化となります。
一方で、このコロナウィルスによるニューノームへの適応は、ウィルスの実態が解明されていない現状、感染を防ぐ手立てをどれだけ出来るかが生死につながります。そしてそれは共同体(グループ・地域・国)単位での変化となります。なので、共同体に住む全ての人が同時に、海外移住したような、強制的に新しい環境への適応を求められているような状況が今の状態と言っても過言ではないでしょう。
異文化変容ストレスの概念の発端は、個人の移住過程ではなくグループ単位での移住後の現地への適応までの現象が注目されたことから始まりました。そのため、この記事でも、異文化変容ストレスとコロナウィルスに伴うニューノームへの適応を並行して説明したいと思います。
*注意:全てわたし個人の見解を元に説明しています。
変化へ適応する時に発生する精神的ストレスの対策法とは?
それでは具体的に、適応に伴うストレスに対して、どのような心のケア対策が取れるのか?まずは以下の5つの対処法を試してください。
⒈ いつもよりも精神的にストレスが溜まりやすくなっていることを知っておく。
上記に挙げたように、変化が人間に与えるストレスのレベルを知っておく事はとても重要です。いつも当たり前のように出来ていたことが思ったよりも捗らなかったり、理由もない気分の落ち込みの頻度も増えたりするかもしれません。
しかし、これはこの変化を強制的に強いている社会の現実が、個人の精神的疲労度に加担している場合が大きいのです。そして、それを心に留めているだけでも大分意識が違います。
まず、大前提として、いつもよりも精神的ストレスが溜まりやすい時期だと認識してください。そして、いつもよりも多めに休息を取り無理しないこと、そして、今まで出来ていたことが出来なくても自分を責めてはいけません。
⒉ どのような感情が自分の中で湧いてくるのか、気持ちの整理をする。
前回の記事『世界全体が異文化変容ストレスを経験している?!新型コロナウィルス感染症がもたらしたニューノーマル、そして変化への適応に伴うストレスを検証』で紹介しましたが、変化がもたらすストレスの原因となる様々な感情について、例を挙げています。
変化に伴って、どのような難しい感情を経験しているのか、自分の気持ちを客観的に見つめ、整理する期間を設けることは、冷静さを取り戻させてくれます。
人間は危機的状況が迫ると、一極集中になり感情的にもなりやすくなります。そのため、自分の気持ちを整理することは、建設的な行動をするためにも大切な行為となります。
⒊ 周囲と比較しないで自分の意思で行動すること。そして、行動に責任をとること。
環境に振り回されやすい状態というのは、人をより不安にさせます。共同体単位での変化だからこそ、同調主義の傾向もいつも以上に顕著に出てくる可能性も高いです。
「周囲がやれと言っているから‥」と自分の意思に反する行動を繰り返すうちに、ますます自分を見失います。周囲に振り回されやすい環境にあったとしても、自分が自分にとって一番納得できることを優先すること。そして、共同体の一員として、その行動に責任をとること。
自分の意思を確認しながら、やっていいこと、やらないことの選択を自分で決める。そしてその責任を全て自分が取るように意識をしていくことで、自分に自信も付き、状況をコントロール出来ている安心感も生まれます。
⒋ 感謝をする。
状況が変わり、今まで当然のように出来てたこと、受け取ってきたことに対して、それがどんなに幸せなことだったのか、ありがたさや感謝を感じる機会も増えると思います。
例えば、自分のことを心配してくれるパートナーや家族に感謝を感じる時もあれば、外に自由に出られること、レストランの素晴らしさ、はたまた、トイレットペーパーの在庫があることがどれだけ安心感につながるのか等笑。
大きなことから小さなことまで、日々発見する小さなありがたみや喜びに感謝すること。
人付き合いにストレスを抱いていた人は、この自宅隔離が感謝の機会になっている場合もあるかもしれません。
心理学の研究でも、感謝をすることを習慣にすることは、人の幸福度に大きく貢献することが知られています。悲しいことも多いこの機会に、あえて感謝を見つけてみましょう。
⒌ クリエイティブを楽しむ。
人間には創造力が備わっています。力が強い野生動物達の中で、ひ弱な人間が自然界を生き残って来れたのは、創造力があったからです。
危機的状況にさらされた今、様々なクリエイティブな試みにより、変化を乗り越えようとする人々や活動に出会います。
過去の記事『危機的状況に直面すると人はクリエイティブになる?人を創造に突き動かす7つの要因』でも説明していますが、この危機的状況は、常識を飛び越えるエキサイティングな活動が生まれやすい条件・土壌が整っています。
例えば、マスク着用が珍しかったアメリカでは、早速マスクをファッションや自己主張に取り入れる人が続出しました。それは、従来のマスクが簡単に手に入らない状況から生まれた、苦肉の策であったと共に、生活を少しでも楽しくする文化にもなりました。
人間の生活が楽しいのは、エンターテイメントや娯楽による喜びや感情の共有があるからです。そして、それは大きなストレス低減法にもつながります。
おわりに
この記事では、ニューノームへの適応変化に伴うストレスを出来るだけ軽減するための方法として、異文化変容ストレスへの対策法を参考に対処法を提示してみました。
上記で挙げた5つの対処法はあくまでも気持ちを少しでも軽くするための方法にしかすぎず、個人の状況によっては、とても辛い心境を抱えている方もいると思います。
世界全体がストレスを抱えている今の状態だからこそ、辛抱はしても、くれぐれも我慢だけはせず、無理をせずに、周囲へのサポートを仰ぎ、必要と感じる機関へ相談することをお勧めします。
クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWAのヤスでした。
関連記事:
参照:
Berry, J.W. (1986). The Acculturation Process and Refugee Behavior. Hemisphere Publishing Co: Washington DC.
Berry, J. W., Kim, U., Minde, T.,& Mok, D.(1987). Comparative Studies of Acculturative Stress. International Migration Review. Vol. 21, N
Bhugra, D.,& Grupta, S. (2010). Migration and Mental Health. Cambridge University Press: Cambridge, GBR.
Joseph Burgo (2018). Shame: free yourself, find joy, and build true self-esteem. Audible. Audiobook.
Kim, B.K.,& Omizo, M.M. (2006). Behavioral acculturation and enculturation and psychological functioning among Asian American college students. Cultural Diversity and Ethnic Minority Psychology, 12(2), 245-258.doi:10.1037/1099-9809.12.2.245
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