新型コロナウィルスによるパンデミックが始まる以前から懸念されていた二極化した政治情勢。
現在、パンデミックへの対応を巡るアメリカ二大政党の見解の大きな違いが原因で、世間が二分しているような状態が続いています。そして、それはもちろん、家族単位にも大きな分裂の危機を起こしています。
ここ最近、家族間、特に保守層支持者の親・義理親世代との衝突に悩みを抱えている成人子供層の相談が増えています。
そこでこの記事では、保守層支持の親・義理親世代との付き合いにストレスを抱えている人に向けて、保守層支持者の物事の受け取り方の特徴、そして彼らとのストレスを出来るだけ少なくするための対処法を紹介したいと思います。
パンデミックは誰も経験したことがない。誰もが、ストレス耐性がいつもよりも落ちている
まず大前提として、多くの人が、今世間が直面しているようなパンデミックを経験したことはありません。
すべての人が何かしらの急激な変化を日々の生活の中に求められているような今の状態は、いつも以上に、人々を不安にさせています。それに加え、連日報道される様々な悲しいニュースに、気持ちが上下に揺れ動くような、感情の振れ幅に疲れてしまっている人もとても増えているでしょう。
社会が全体的に、パンデミックの前とは比べものにならないくらいストレスフルな状態。そして、ストレスへの耐性が落ちている人が多い、それは、わたしを含め、誰にでも当てはまるように感じています。
まずは、自分と相手のストレス耐性がいつもより落ちていると知っておくこと。そしてそれは、家族間の揉め事が大きくなりやすかったり、不快なやりとりが大きなインパクトを持ってしまいやすかったりする原因にも繋がると理解しておく必要があります。
保守層とリベラル層の脳には違いがある
2012年に発表された心理学の研究では、保守層支持者はリベラル層支持者に比べて、不安を感じやすい性質を持つという結果が出たそうです。
そして、保守層はリベラル層よりも不安を感じやすいため、一般的に安定的であったり、枠組みがあったり、慣れていることを好んだり、難しさを伴う内容にもシンプルな答えを求める、といった傾向があることが報告されました。
その後さらに脳の研究からは、保守支持者の脳は、感情的な(特に恐怖心につながる)学習を司る扁桃体がリベラル層よりも大きいこと、そしてリベラル支持者の脳では、前帯状皮質が活発な人が多いことが分かったそうです。
前帯状皮質は、揉め事を察知することも含む、脳内の様々な機能をつなげる役割を担う脳のエリアであり、本来の意図を把握したり、習慣的な行動と起きていることの矛盾に気付いたりして自身の行動を自己制御することを可能にします。
保守層とリベラル層には、このような脳の仕組みにそもそも大きな違いがあるそうです。つまりそれは、政治的な話題で揉め事が起きてしまう時は、両者がそれぞれ、全く別の視点を前提にしながら議論をしている可能性がある、ということなのです。
保守層の不安に目を向けてみることが和解への近道
恐怖心が強く不安を感じやすい人にとって、変化を迎えることはとても大きなストレスになります。日米の例を取ってみるだけでも保守政党が目指す、「本来のアメリカに戻ろう」「日本を取り戻す」。これらのメッセージは、変化を嫌う人にとって、大きな安心要素になることが分かるでしょう。そして、民主党のオバマさんが長らく掲げていた「変化」という言葉が、どれだけ保守層の不安を掻き立てたか。
つまり、保守層とリベラル層の方との会話では、保守層の彼らにとって何がトリガー(気持ちを逆撫でする引き金)になるのかを理解し、リベラル層側が理論で攻めるのではなく不安に寄り添うような共感心を持っておくと、少し会話の衝撃度を抑えることが出来るようになるかもしれません。特に、今のパンデミックの状況は、大きな変化が否応なしに押し寄せている上に、予測できない未知の事態が続いているため、より大きな不安や恐怖を抱えている保守層の方も多いでしょう。
保守層の親や義理親との揉め事を回避する方法とは
赤の他人との支持政党の違いは無視できるものの、親子間で支持政党が違うと、嫌でも関わりを持たなくてはなりません。
パンデミックが無い状態であったならば「支持政党の違い」で済むはずが、コロナウィルスの対策を巡り大きなズレのある両者にとって、この対策への取り組み方の違いが大きな原因となって保守層の親・義理親と揉めているケースが多いかと感じます。
「保守支持の親や義理親が、子供や孫に会いたがっているが、会う時の安全対策に同意してくれなくて困っている。」
「相互の安全をと思って会わないのに、親や義理親に悲しがられたり責められたり罪悪感を感じている。」
「いくら安全性を話しても、対策を提示しても、無視して友達とパーティしたり外出制限を設けたりしない様子に苛立ちを覚える。」
これらに対応するには、以下の5つを試してみてください(アメリカでは、支持層の異なる親や義理親との同居がとても少ないこと、読者のみなさんが保守層の親とは同居していないことを前提に話しています。)
⒈ 自分や一緒に生活する家族にとって、一番安心出来る安全基準やルールを決めておく。
これは、保守・リベラル関係なく、コロナウィルスへの不安を取り除くことを第一に、家族が団結して決めるべき項目であると思います。ここには政治の話を持ち込まず、家族の安全にとって何が一番必要な対策なのか、そこに注視して、CDCからの科学的根拠を元にしたアドバイスを参考に、家族内で出来ること、出来ないこと、今は控えた方がいいこと、それらを論理的に考えて決めていく必要があります。
⒉ 親や義理親に会うための揺るがない条件を提示しておく。
⒈で決定した内容を提示し、それを元にした会う方法を明確にシンプルに分かりやすく提示する。それに従えない場合は、心を鬼にして断固として会わないと決めてしまう。この際、相手に大きな不安がある場合や感情的な脳の働き方が根底にあると想定し、相手の気持ちに少し寄り添うような様子を見せる。そして、代変案として、オンラインで会うなど別の繋がり方やコミュニケーション方法を提案する。
⒊ 罪悪感を感じないこと。
会えない決定を下した場合、親から顰蹙(ひんしゅく)を買うことがあるでしょう。しかし、これに関しては、仕方がないことです。罪悪感から、自分の基準や許容範囲を変えてまで相手の思うように会ってしまうと、自分のストレスや不安レベルが上がっていくだけです。これは、相手と自分との間に(たとえ親子だとしても)持っているべきバウンダリー・境界線です。
⒋ 政治の話は出来るだけせず、家族との交流を楽しむことに専念する。
双方が合意できる条件のもと、一緒に時間を過ごすことが出来たならば、その時は、政治の話は一切せず(もしくは無視し)、家族と触れ合う『今、その瞬間』の体験を楽しむことに専念しましょう。
⒌ 論争に決着がつかない時も‥その時は諦めることも大事。
もしもお互いが和解に繋がることが出来なかったならば、これはもう仕方がないことだと、議論を続けるよりも極力双方が必要な時以外関わりを持つことを諦め、冷却期間を設けることも必要かもしれません。例えそれが、親・義理親を心配に思う気持ちから説得を試みようとする場合であっても、自分にやれることには限りがあり、最終的に行動を決めているのは親・義理親の個人の責任であることを理解しておくこと。
このパンデミック下において、ネガティブなやりとりや揉め事を減らせるのであれば、減らしておくに越したことはありません。
おわりに
この政治背景とパンデミックの状況で、親・義理親との関係が大きく変わってしまった人たちがたくさんいると思います。しかしながら、譲れるところ、譲ってはいけないところ、その基準を自分の中ではっきりと理解しておくことが、ストレスを少しでも減らし、この混乱の状況を乗り越えていくための対処法となります。
この家族間の問題は、残念ながら現在の政治背景により生み出されてしまった点が大きいですが、自分と親・義理親との、今まで見えなかった不健全なバウンダリー・境界線を浮き彫りにしている場合もなきにしもあらず。今、親・義理親とパンデミックが原因で揉めてしまっている人は、自分と親・義理親との間のバウンダリー・境界線が今まで本当に適切であったのかを見直す機会でもあるのかもしれません。
クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWAのヤスでした。
関連記事:
参考:
https://www.psychologytoday.com/us/blog/living-between-worlds/201610/what-do-when-politics-and-family-collide
Comments